庭潤日記

植木屋の日々の出来事

ふつうの人

この前久しぶりに、安諸庭園の仕事に行った。

仕事の内容はというと
茂りすぎた木の枝おろしと間引きだ。お客さんの庭が林につながっていてその林の木の枝おろし



最近、安諸庭園にちょこちょこと手伝いに来ている職人がいると言う。

噂には聞いていたけど会ったことはなかった
高いところが得意で、しかもなんでも器用にこなすという。
もと鉄骨とび職らしい


はじめての現場


なかなか来ない

「やばい、ばっくれられたか」


気まぐれらしい


そんなとき
「すいません遅れました」

大きなリュックサックを背負ってやってきた


すごい雰囲気だ
完全に野生のにおいがする


久しぶりに会った懐かしい感じワクワクする。



さっそく塩と酒で山木を清めお礼を言って分け前をいただき、仕事に掛かった。




すごい


猿だ。


淡々と高い木にあがっていく


2連のハシゴしかも長手のをかけてはいるが、まったく意味がないほど高い木ばかりだけどロープ一本で
するすると登っていく。

早い、
ここまでの人はおれは初めて見た。



長く張り出した枝も先の方までひょいひょいと、


だけど、まったく無謀さを感じないんです。
すべて確実。
落とす枝もけして下にいる人たちが無理するような大きな枝は落とさない

危険なことをしているのに安心してみていられる
まるで野生の動物を見ている感じ


怖いことを知っている
「あの人は死なないな。」


この忍者のような職人は、連絡先も家も誰も知らない。
携帯電話やEメールが当たり前の平成の世の中では嘘のような話しだが
これは事実です。

手伝いに来ている間に次の約束をしておくか
通りそうな所で待っているか張り紙をするらしい。

通りそうと言っても多摩丘陵に鎌倉時代からあると言われている山道で
山の木が深くおいしげり昼間でも暗いときがある
道は今でも舗装はされておらず雨の日はぬかるみ
夜は不気味なほど暗い闇夜を作り出す


良いこともある


冬の月夜は少しいい
杉やカシの木の下は真っ暗だが
大きなクヌギの木の下などは月明かりが差し込み、白く照らされた乾いた落ち葉はサラサラとしたにおいで暗い闇を振り払ってくれる

初夏には蛍が飛び交い
まだ今頃は虫の声が聞こえるであろう


道や土地にも気があると思う
明るい暗い、陰と陽


今から20年ほど前のことだ

京都駅の一番はずれのホームの先から山陰線が出ている
山陰線がディーゼルから電車になったころだったろうか、それにしてもまだ禁煙車というのがあるくらいで
ほとんどの車両でタバコが吸えた時代だ

おれはその列車に乗り込んだ

ちょうど盆休みの頃で混み合っていたが通路側の席が一つあいていた

窓側には30代半ばくらいの気さくな感じの兄さんが素足を投げ出して座っている

その兄さんがタバコを差し向け
「吸うか? 俺だけ吸ったんじゃ悪いからさ」
と言った

ちょっと前までは長距離列車では隣の客と良く会話するのがふつうだったような気がする

その兄さんはどうやら東京の人らしい、
おれは高校をでて京都で植木屋の修業中だ、京都にあこがれていた

京都の話しになった
「京都は怖いところだよ」兄さんは言った

厳しくて怖いのかと思ったけどそうではないらしい

「京都は暗くて怖いよ、長い間血で血を洗う争いが多かっただろう だから怖い雰囲気がただよってる」

「えー、そんなことあるんですか・・・でも確かに暗いかも知れない」

面白いことを言う人で、話はだいぶ盛りあがった


東京もかなり暗い場所のような気がする

もちろん街ばかりじゃなくて、のどかな田舎道でも長い道のりを歩いていると陰と陽が繰り返すような気がする


争いごとが多いと暗い雰囲気がただようのであろうか
まあ、そんなことはわからなくてもいいことだ


話しは元に戻るが
この多摩丘陵の歴史ある古い道はどちらかと言わず陰だ

かれはそんな山道を普段の通り道にしているらしく
夜中でも漆黒の中を歩いてとおる

きっと闇の中に自らの姿をとけ込ます技を持っているに違いない


おもしろい。




おれが安諸庭園に通い始めた頃、こういう「ふつうの人たち」が
親方のまわりにたくさんいたように思う。

安諸庭園だけではない

日本中でたくさん出会った


それぞれいろいろな業を持っていて生きている。

浮ついた情報に惑わされず自分の力で生きている、ふつうの人たち。




今の時代、こういう人たちが「変わってる人」になってしまった。


人目を気にし、情報に惑わされハリボテの道ばかり作り安心していると

今に山は怒り出すだろう



ふつうの人がふつうでいられる世の中であってほしい



できれば陽気な未来をむかえたい




おれはそう思う










  1. 2010/10/17(日) 06:19:08|
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