ついこの前のこと、ケヤキの枝をナタでさばいていたときだ。
向こうから聞こえてきた
「ひだり みぎ ひだり みぎ
はい ひだり。 ほら みぎ。 」
ちょっときつい声だ。
今年の春から夏にかけて、福井県にある お寺にお世話になっていた。
とてもすばらしい禅宗のお寺だ。
帰ってきてから
「何が変わりましたか?」
なんて良く聞かれたりしたが、ピンとした答えが見つからなかった。
「テレビを見なくなった」
「あまり いらいらしなくなった」
なんて答えていたが どうもしっくり来なかった。
そんなことか?
それだけか?
それでも 日は過ぎていく。
自分で切り落とした ケヤキの枝を、ナタでさばく。
意外と集中する。
気を抜いてすべれば、足にでも刺さるであろう。
さされば 結構痛いぞ。
痛いのはいやだ。
だから 気を定めて パシッ とやる。
「 ほらー ひだり ひだりよ ひ だ り 」
姿が見えてきた。
二つか三つになったばかりほどの おんなのこ。
三輪車のような、ペダルのある乗り物に乗って父親に押されている。
母親がとなりでしかめっ面だ。
「 ひ だ り み ぎ 」
その子は 飛行機にでも乗っている気分であろう。
前を向いている。
もちろん 右も左も分からなそうだ。
あ !
雲がパッときれた
おれ あの子と同じだ。
あの子も 母親も おれも 同じだ。
何一つまともに出来ない。
それだ それを教わったんだ。
そうだ それを感じて来たんだ。
おれは何一つまともになんか出来やしない。
別に非を感じているわけではない。
ただ それだけのこと
あたりまえのこと
だから生きていく
おれは何一つまともになんか出来ない。
それだ。
晴れ晴れした!
前さえ向いていれば いつか おれにも ペダルがふみこげる日が来るはずだ。
がんばろう!
- 2012/12/18(火) 22:57:32|
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