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庭潤日記

植木屋の日々の出来事

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言語

四十日ほどの旅仕事から、先日帰ってきた。

色々な場所で多くの方のお世話になり、たくさんの感動と学びをいただいてきた。

中でも 思いがけない感動をいただいた事があった。




我々 日本列島に住む日本人は、日本語という共通の言葉というものを持っているような気がする。

気がする というのは、変な表現かと思われるかも知れないが、

お互い日本語を使って意思を伝え合っているつもりでも、意外と通じていない。


「いやいや さっき言っていたじゃないか」とか
「そう言うことを言っていた訳じゃない」
「全然分かってくれないじゃないか」

な〜んてことは、口から言葉を発すれば ほとんどがこんな感じかもしれない。

言葉による伝達はかなり難しいものだ。



そして、幸せなことに 日本には方言というのが残っている。

土地土地の風土で育った方言。

まずこれは 他の土地の言葉で訳せないものも 少なくないだろう。

しかも、これに なまり が加わると他の土地の人間には、さらに聞き取りにくくなる。


これはこれで とてもすばらしい事であると思う。

風土そのものであるから。


道中、お世話になった出雲地方にも聞き取りにくい言葉が残っていた。





四月に入ったとは言うものの、花冷えがきつく雨も朝から降っていた。

雨合羽を借りて現場に向かう

ミハラさんは「昼には終わるよ」なんて言っていたが、内心そんなはずは無いと思っていた。

その日の仕事は 松の木の植え替えだという。


元請けで ミハラさんの兄貴分の職人が待つ、お宅に向かった。

五十手前くらいであろうか 軽トラックに道具を満載にして、

誠実そうな、いかにも土地の人といった感じの職人が待っていた。

その道具の積み込み方からしても、腕の良さが にじみ出ている。

初対面だ。どんな人かワクワクする。



その日の仕事内容は あまり分かってない。

それどころか、今ついたお宅が職人の家なのかお施主さんなのかもよくわからない。

さっそく 土間で朝一番のお茶を頂いた。
 
何か色々と話しているが、これも今ひとつよく分からない。

とにかく まずは、こちらの畑の松の木を動かすらしい。


松の木の高さは 屋根の軒上ほどではあるが、枝がよく下がって形が良い。

いかにも黒松というかたちをしている。

その木が、植木畑に植わっていて、それをどこかの木と植え替えるらしい。



とにかく その形の良い松の木の根鉢を掘り起こすことからだ。

根鉢の大きさや形は基本があり、ほとんど決まっているが、

微妙な形やこだわりは、職人により様々で 

言葉では言い表しにくく、はだで感じて行くしかない。


寒さと雨のせいも加わってか、三人ともほとんど会話がない。

黙々と穴を掘る。


根鉢の形が現れたら、根鉢をコモと縄で巻いて、崩れない様にする。

この 鉢巻き という作業は植木屋の何たるかが、もろに現れてしまう一つじゃないかと思う。


この兄貴は 手際がよく縄もよじらさず几帳面に無駄なく巻いて行く、

きっちりした職人を前に緊張する。

自分では、まあいいかとついつい油断してしまうところである。

だらしなさを雨合羽の中に隠し込んで、一生懸命に手を動かす。


この間 不思議なほどに会話がない。

しかし 作業は間をおく時がない。


鉢巻きを終えるとトラックに積み込み、次のところに向かう。




白砂利の奥に築山がある

そこにまだ細い黒松があり、岩が組んである。


その細い松と取り替えるのだという。

庭を酒で清めお神酒を頂く


砂利をはがし 根締めの低木を抜き 岩組をはずし、その細い松の根鉢をまた巻く。


形の良い松が庭に入った。


庭によく映える


松の木の顔を見る少しの間、時間が止まる。


そして その松に合わせて庭を戻して行く。


少しでも止まると体が冷えて行く。

三人がそれぞれ違う動きをしながら、仕事が進んで、庭がおさまった。


そして、

細い松や植わらなかった木を 朝の畑に戻しに行く。






結局 一日ほとんど三人とも、いわゆる会話というものがなかった様に感じる。

しかし初対面でも仕事は進んだ。もちろん納得されたかどうかは分からないが

間をおくことなく進んだ。


それは 俺らには 植木屋 という言語があるからだと思った。


無駄な気遣いはいらないし、口から発する言葉もほとんどいらない。


ただ 植木屋 という言語で伝え合うだけ。



泥だらけの雨合羽を洗いながら 深い感動に包まれた。







仕事がすんだ


ミハラさんの実家に戻り、

五右衛門風呂を頂き,地場産の鍋物に熱燗



これは もう、 言葉にはできない。
















  1. 2013/05/07(火) 08:40:44|
  2. 思い|
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